普通の人をイメージできるようになると、ワークショップデザインは鋭さを増す
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WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。先日参加者の好奇心に火をつけるワークショップデザインの要点という記事を書いた際、少しだけこのテーマについて触れました。その際に、これは単独の記事にしておきたいなと思ったので、今日は普通の人をイメージすることの重要性について書いてみます。
精度の高いワークショップデザインは「普通」をイメージすることから始まる
私は、機能するワークショップをデザインするコツの1つは、一般的な参加者像=普通の人を解像度高く想像することだと考えています。ワークショップには多様な方々がご参加されますが、その大多数は普通の人です。そのため、この方々にとって無理のないワークショップデザイン、学びが多いデザインができれば、必然的に場の満足度が高まります。
ですが、ワークショップを「自分にとっての普通」からデザインしてしまい、参加者とのフィーリングが合わず、失敗に陥るというケースをよく見かけます。これには注意が必要です。
例えば「少し頑張って本を読む」という言葉を見た時に、あなたはどんな量を想像しますか? 私には2週間で20冊くらいを読むことが想起されます。ですが、日本人は本を月に1冊程度読むのが平均だそうなので、きっと大半の人にとっての「少し頑張って本を読む」は、月に2冊読むとか、1週間で1冊を読み切るなどではないでしょうか。このギャップは大変です。従って、もし私自身の基準で読書をテーマにワークショップなどをデザインしてしまったら、全く的外れなコンテンツができあがり、盛大に滑るはずです。
これは極端な例ですが、多くの人が「自分にとっての普通は、参加者にとっても普通」であると無意識のうちに思い込んでいます。ここに落とし穴があるのです。ワークショップデザインでは、自分の普通ではなくて、大多数の参加者にとっての普通は何か、を意識しなければなりません。
こうした想像力は一朝一夕には高まらないので、常日頃から「普通の人だったらどう考えるだろう? どんなリアクションをするだろう?」と事あるごとに想像し、観察し続けることが大切です。
毎日のニュースなどはこのトレーニングに最適です。例えば電気代が30%値上げというニュースに接したら、普通の家庭はどんな反応をして、どんな対応を取るだろう? と想像をしてみるのです。加えて、ものすごいお金持ち、生活がギリギリの家庭はどうだろう? と極端なケースにも思考を伸ばしてみます。そうすると、一般的な人々の輪郭がより鮮明に見えてきます。
普通ってなんだろう? どんな状態だろう? と想像を膨らませるには、下記の図のように軸を対比させて、その真ん中を探るように意識してみると取っ掛かりやすいかもしれません。
とても主張的な人と、非主張的な人のちょうど真ん中に位置する人って、どのような振る舞いをされるのだろう?
楽観的な人と悲観的な人のちょうど真ん中にいる人って、困った時にどう考えるのだろう?
と探索の質問を自分に投げかけるのです。
人は複雑な生き物なので4象限の図1枚だけで全てをつかむことは不可能ですが、こうした対比を何個も積み上げることで、普通の人像の解像度は増していきます。
ワークショップに参加する方の普通を捉える
その上でもう一歩踏み込んで言えば、世間一般の普通に加えて、ワークショップに参加する方々の普通を捉えることが極めて重要になります。なぜなら、ワークショップ参加者の普通は、会ごとに全く異なるからです。
例えば私が新卒時代に入社したリクルートでは、毎夜21:00頃まで嬉々として働き、それから繁華街へ繰り出す日々が週に4~5日、花金はオールで朝までという日々が普通でした。催事も充実していて、半年に1回はチームメンバー全員で旅行を開催していました。これは世間一般のサラリーマンと比べてどうでしょうか?
同じように、小学5年生の男子と言っても、東京で有名私立校に通っている方と、地方の限界集落で過ごしている方とでは、普通の感覚は全く異なります。
こうした特定の参加者像をイメージするために必要になるのが、先ほどの章で書いた「世間一般の普通」になります。今回参加してくださる方々の普通は、世間一般の方々の普通とどう違っているのだろう? 何は共通しているだろう? と差分を考えてみることで、輪郭がハッキリと浮かび上がってくるのです。
ここまでを想像しワークショップを設計することが自然とできるようになれば、参加者から喜ばれる場作りにグッと近づきますよ。
今日はここまで。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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