アイスブレイクはワークショップ本題への橋渡し

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。先日、知人からワークショップデザインについての相談があり、1時間ほどお話しさせていただきました。ワークショップ案は全体的にとてもまとまっていましたが、アイスブレイクのパートだけ、やや引っ掛かりが残りました。テーブル内の参加者との交流が重視されていて、メインパートへのブリッジとしてはそう機能していないように見えたのです。

実は、こうした事象はたびたび目にします。特に学生がデザインしたワークショップは、アイスブレイクでとにかく盛り上げなければ、という傾向になりがちです。確かに「アイスブレイク」という言葉だけを見れば、場の堅い雰囲気を溶かすために盛り上がる、というふうに捉えてもなんら間違いはないかなぁと思いますが、この認識だけだと勿体ないんですよね。ここにもう一つ意味を加えて、ワークショップ本編への導入という意識も持っていただきたいのです。

つまりワークショップのアイスブレイクは、参加者の緊張をほぐすことに加えて、本編で扱うテーマに関連させ、主題への興味や意欲が喚起されるような仕立てでデザインするのがベストということです。二兎を追う者は一兎をも得ずなんてことわざもありますが、ワークショップのアイスブレイクは堂々と二兎を追ってください。

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アイスブレイクは本編への導入パート

私は過去の記事でも書いてきましたが、アイスブレイクで重要なのは盛り上がることではなく、参加者が場に馴染むことだと考えています。そのため私は、アイスブレイクを考える際、大音量で踊るとか、ゲラゲラと笑い転げるような、過度なアクティビティは選択しないようにしています。

こうした前提の上でさらに突っ込んで言いますと、私はアイスブレイクをアイスブレイク単体で終わらせるようなワークショップデザインは推奨していません

というのも、ワークショップで何らかのテーマを扱う際は、いきなり本題から話し始めるというのは難しいわけです。たとえば「どうしたら人類は幸福になれるか?」みたいな壮大なお題を深めるとしたら、最初は参加者をテーマに接続するための小さなステップが求められます

そこで「あなたはどんな時に幸せだなあと感じますか?」「きのう幸せだなあと感じたのはどんな瞬間でしたか?」なんて問いかけを用意して、一見遠いテーマを、ぐっと参加者側に引き寄せてくる時間をデザインするんですよね。

それから徐々に問いかけの難易度を上げたり、対象範囲を広げたりしながら、本題の探究を深めていきます。

扱うテーマが終始一貫していれば対話は深まる

ここで大きな問題になるのが、ワークショップは時間が限られているという点です。ワークショップはだいたい2~3時間が主流、無駄にして良い時間は多くありません。

このために、アイスブレイクを盛り上がるための時間だけとしてデザインしてしまうと非常にもったいないんです。ただ盛り上がるだけの時間は、本題を探究するための時間を犠牲にしているわけですから、厳しい言い方をすれば、自らワークショップの深まりを阻害する要因を作り出しているのと同義です。

短時間のワークショップでは、アイスブレイクを単体で独立させず、メインパートへの導入として機能させた方が、段違いにワークショップが深まります

ちなみに私は、アイスブレイクと本編の関係について、このようなイメージを持っています。

アイスブレイクが本編に全く関係ない場合、両者のつなぎがうまくいかないので、ワークショップの流れはぶつ切りです。うまく移行できれば良いですが、あまりに本編との断絶が大きい場合、最初はなかなかテーマに入っていけない参加者がいます。ストレスが多く、ワークの切り替わりのタイミングでガタつきます。

一方でアイスブレイクと本編がしっかり接続されているケースでは、滑らかにワークが続いていきます。扱うテーマが終始一貫しているので、参加者の思考が散らかることもなく、集中して対話を深められる確率が高くなりま

参加者とメインテーマが接続される導入パートをデザイン

こうした連続性のあるワークショップをデザインするために私がよく使っているのが、テーマに関連したお題で自由に共有しあっていただくというシンプルな導入です。「テーマに関する体験」「テーマに関して知っていること、知らないこと」「テーマに関する最近のニュース」などが主なバリエーションになります。

たとえば円滑なコミュニケーションがテーマであれば「他者とコミュニケーションが噛み合わなかった経験」について、スマートシティ推進がテーマであれば「スマートシティに関して知っていること、知らないこと」について話し合っていただく、といった具合です。派手さは全くありませんが、これらの対話とチェックインの時間がちゃんと機能すれば、参加者のマインドはかなりほぐれます。

アイスブレイクを本編への導入としてデザインできるようになれば、ワークショップの対話はさらに良質になります。ぜひアイスブレイクをアイスブレイクのためだけに使わず、先々への布石として活用してみてください。

今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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