WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。宮城県気仙沼市からお招きをいただき、12人の参加者に妄想アイデアトレーニング「モウトレ」をご提供させていただきました。
「2030年に出生率1.90」をターゲットに活動を展開されている気仙沼市役所庁内ワーキンググループの皆様が対象で、各課を超えた協働を創出するためのトレーニングの一環です。
子どもがたくさん生まれる 幸せなまち気仙沼 を実現するためには?
出生率1.90を達成するという目標は、現在の出生率が1.1程度で、出生数は50年前と比べて1/8にまで減少している気仙沼市にとっては、かなり壮大なチャレンジです。これらは全国平均と比べても突出しており、相当なスピードで少子化が進んでいると言えます。
こうした状況に違いを作り出すためには、既存の枠を打ち破るアイデアを大胆に発想していただく必要があると考え、
もし2030年代に「子どもがたくさん生まれる 幸せなまち気仙沼」が実現できているとしたら、どんな施策や活動が行われただろう?
と未来を起点にした問いを設定しました。
モウトレはプロダクト開発をお題にした共創を多く実施してきており、社会課題との掛け合わせは初めてでした。そのため、どのような場になるのか予想が難しかったのでしたが、結果的には①5個以上のアイデアを出す ②斜め上のアイデアを出す ③アイデアを掛け合わせる という3ラウンドのアイデア出しから、144個ものアイデアが生まれました。
やや緊張したのも杞憂で、次々と生み出される新たなアイデアに、会場は多いに盛り上がりました!
象徴的だったのが、「このアイデアは実現したい!」「これとこれを融合させたらもっと面白くなるのでは!?」と、参加者の皆さんが休憩中もずっとモウトレのサイトを見つめながら対話を続けてくださっていたことです。
休憩中も参加者が前のめりで話し続けるワークショップは、年に数回程度です。意欲的な対話づくりに貢献することができ、とても嬉しく思いました。
144アイデアから抽出した9つのテーマ
第2部では、144個のアイデアを下敷きにして、各グループごとに 現在の高校生が喜ぶアイデア Top3 を考えていただきました。
気仙沼市がターゲットとして定めている2030年代に、現在の高校生は25歳〜35歳程度の年齢となります。この年代が積極的に子育てをしたいと思えないと、出生率の向上は望むべくもありません。
そのため行政、あるいは参加者の視点からではなく、彼ら彼女たちを中心として、どんな施策や活動が展開されていると理想の未来に近づいていけるのか、を検討していただくことが重要と考えました。
ディスカッションの結果、144個のアイデアは9つのテーマに編集、集約され、全体で各テーマの背景を分かちあいました。
オンライン環境の進化から作り出す「多様な働き方の選択肢」
「仕事のオンライン促進」をテーマに掲げたグループからは、都会でしかできない仕事の存在が気仙沼から若者を流出させているという長年の課題感が提示されました。気仙沼市内で、魅力的な仕事や、理想の働き方を実現できるようになれば、地元に残る人も増えるはずです。
オンライン化が進んだ好影響によって、働き方はどんどんボーダーレスになってきており、現在は地方にいながら大手企業で働くチャンスに恵まれています。であれば、企業側にインセンティブをしっかり提示し連携して、多様な企業に「地域枠」を設けていただく未来も考えられるのではないでしょうか。
これまでのローカルは、自分たちの町へ大企業を誘致することで雇用を創出してきましたが、これはサステイナブルとは言えません。こうした旧時代のやり方を手放し、企業が地域人材を採用し、オンラインで業務に従事してもらうことが、結果的に企業価値を高めるという世界をもし作ることができたら、大きなパラダイムシフトですよね。
そのためにも、オンラインでの業務環境をさらに整えていく価値が熱く語られました。
地元への愛着を生み出す「バースデーサービスの充実」
子どもの誕生日には休暇がもらえる、地元の食材など市からのプレゼントが郵送される、買い物が割引されるなど、複数のアイデアを「バースデーサービスの充実」というテーマに統合したチームからは、親には気仙沼で産んで良かったと思ってもらいたいし、その子どもには気仙沼にもっと愛着を持ってもらいたい、という願いが共有されました。
そのために、みんなで子どもの存在(誕生日)を祝う仕掛けを作ろう! というわけです。
いいコンセプトは、自然とアイデアを連れてきてくれます。個人的には、地域通過のプレゼントがもらえて、子どもが自分で好きな商品を買える機会があったら、町への愛着も形成されるし、お金との付き合い方も学べるし、地元経済へ貢献もできていいなあと感じたことを講評させていただきました。
前述のような堅いテーマを真剣に議論することも大事ですが、こうした親しみやすさのあるテーマを楽しく想像してみることも、コミュニティをデザインするための場には欠かせません。
特に今回は、各課を超えた協働を創出するためのトレーニングの一環という位置づけでもありましたので、横断的な施策検討や調整をイメージするために、ちょうど扱いやすい粒感だったように思います。
モウトレ×行政課題に感じた可能性
今回は初めてモウトレを社会課題とかけあわせてみたのですが、とても活発な議論の土台が出来上がり、その結果、手応えや納得感の高い取り組みテーマ創出に貢献することができました。2023年はモウトレをさらに拡大していこうと思っていましたので、新たな世界を見せていただき感謝です。
気仙沼市の職員の方々からも、このワーキンググループだけではなく、新人研修や管理職研修、同じ部課内でのアイデア出しなど、様々なシーンで提供してほしいとお声がけをいただき、とても嬉しい1日となりました。
ご依頼をいただきありがとうございました。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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