ワークショップのファシリテーション中は「投影資料」より「参加者」を見よ!

WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。この1週間は、自分が独立してから実施した5年分のワークショップを一覧でまとめていたため、ブログの更新をお休みしておりました。

これまでに実施したワークショップ見返してみると、当時の記憶が鮮明に溢れてきて、とても懐かしい気持ちになりました。また、各ワークショップの流れや、会の様子、作った投影資料などは驚くほどよく覚えていて、経験してきたことが血肉になっているんだなあと感慨深かったです。

さて、以前ファシリテーターには必須の「意図を持って立ち位置を決めるセンス」という記事を書いて、ファシリテーターの立ち位置についての考えをご紹介しました。今回はこの記事に関連して、ファシリテーション中の視線について意識していることをご紹介します。

目次

ファシリテーション中は参加者に視線を向け続ける

結論から書きますと、ファシリテーション中は参加者に視線を向け続けることが大切です。なぜなら、場の空気をつかみ適切なファシリテーションをするためのチェックポイントという記事で書いたように、参加者の表情や姿勢、仕草や反応などのシグナルに敏感であればあるほど、場のムードを適切につかむことができるからです。

参加者の様子を無視している、あるいは全くつかめていないファシリテーターのワークショップは、糸が切れた風船のように、ただただ風任せになってしまいます。運が良ければ盛り上がりますし、悪ければ大した成果の出ない会になることは必至です。

こうした事態を招かないために、ファシリテーターはワークの説明を語りながら、もう一方では常に参加者の様子を観察する必要があります。なかなかの忙しさではありますが、これは慣れるしかないですね。

ちなみに私の場合は、観察と言ってもじーっと参加者を見つめるのではなくて、察知することに重きを置いています。うまく言えないのですが、参加者のニュートラルな状態を基準に、上振れした瞬間の仕草(手を叩いて笑う、力強く指をさす、のけぞってお腹を抱えるなど)と、下振れした瞬間の反応(首を傾げる、顎に手を当てて固まる、同グループの複数人が視線を下方に落としているなど)が生まれた瞬間をオートで捉えるイメージです。

こうした、人の理性では制御できない反射的な振る舞いを収集すると、会のムードがよく分かるのですが、これはじーっと凝視しているより、全体をぼんやりと眺めておくほうが察知が容易なのです。

投影資料に気を取られると視線が外れる

上記から、ファシリテーション中は広い視野を確保し続けることがとても重要なのですが、これを阻害するひとつが「投影資料」の存在です。投影資料はワークショップの円滑な進行を助けてくれる超重要ツールで、ほとんどのワークショップで活用されていると思います。もしワークショップで投影資料を使えず、口頭説明だけでコンテンツを進めるとしたら、ワークの指示伝達にかかる労力はとんでもなく激増します。自分はちょっと考えたくないです。

それくらい便利である一方、ファシリテーターが投影資料に気を取られすぎると、たちまち参加者の様子が見えなくなってしまうので要注意です。しっかりと説明をしたいがために、手元のパソコンや、会場のスクリーンばかりに視線を集中させてしまっていると、当然ながら会場のムードはつかめません。中には進行の指示中、ずっと画面を見続けているファシリテーターの方もいますが、上記の理由からできる限り早くやめたほうがいいと私は思うんですよね。

ではどうすればいいかなんですけれども、答えはシンプルで、投影資料を見なくても喋れるくらい、内容を自分の頭に記憶しておく。この準備の有無が肝だと私は思っています。

私はワークショップの前に計3回、投影資料を覚えるための時間を設けています。

ひとつ目は資料が完成したタイミングです。内容に齟齬がないか、資料のレイアウトが崩れていないかなどの確認を兼ねて、各ページを念入りに眺めます。ふたつ目はワークショップ当日の朝です。身支度をする前に投影資料を開いて、進行の流れをもう一度頭の中に呼び起こします。それからシャワーを浴びながら、どれくらい内容を記憶できているかを振り返ります。

最後は本番直前です。ワークショップ当日の準備リストという記事に書きましたが、プロジェクターの映りをチェックし終えたら、あらためて投影資料の全ページを見返し、ワークのつながりや記載の文言を脳裏に焼き付けます。

こうした意識を準備段階から持って投影資料と向き合い、脳内でリハーサルを済ませておけば、資料のかなりの割合をスラスラと語れ、参加者の様子に意識を傾けられる割合が高くなります。

きちんと伝えたいパートは説明に集中

ただし、説明が多いパート・特別に重要なパートに関しては、この限りではありません

ワークショップでは扱うテーマの先進事例を紹介したり、参加者が初めて触れる概念をご説明するケースなどが多々あります。こうした点はきちんと理解いただき、認識を揃えていただかないと、対話がうまく噛み合わないものです。そのため、説明に集中すべきタイミングでは、しっかりと投影資料を見ながら伝え切ることもまた、円滑なワークショップ運営における重要ポイントです。

自分にとって馴染みがないトピックス、参加者の方が専門分野である話題なども、丁寧な説明・発言が必要になります。こういうところで外してしまうと参加者の没入感がとたんに損なわれてしまうので、意識のウェイトを自分の発話に多く充てて、しっかり説明しきるのが吉です。

こういう切り替えを意図的にできるようになると、視野が広がり、ワークショップのファシリテーションが一段進化すると思います。

今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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